「鍼灸って、どうして自律神経に効くんですか?」
鍼灸師が患者様からよくいただく質問だと思います。
このご質問には、
「血流が良くなるから」
「リラックスできるから」
といった答えがよく返ってきます。
もちろんそれも間違いではありません。
でも実は、もっと根本的な理由があります。
それは、
鍼灸が自律神経に『命令』をしない治療だからです。
自律神経の本当の役割は「調整」ではなく「監視」
自律神経というと、
・交感神経=緊張
・副交感神経=リラックス
というイメージが強いと思います。
ですが、近年の神経生理学では、自律神経の大きな役割は『体の状態を脳に伝える「監視」』だと考えられています。
たとえば迷走神経は、約70〜80%が「内臓から脳へ情報を送る神経」だとされています。
つまり自律神経は、
「指令を出す神経」というよりも、
体の内側を見張り、報告する神経なのです。
体はもともと「自分で整う仕組み」を持っている
私たちの体は、
・血圧
・心拍
・消化
・免疫
・ホルモン
を、常に無意識のうちに調整しています。
これは、脳が頑張って考えているからではありません。
体から上がってくる情報をもとに、脳幹や視床下部といった中枢が自動で判断している仕組みです。
だから本来、体は放っておいても整う力を持っています。
ただし——
ストレス、疲労、緊張が続くと
この自動調整がうまく働かなくなります。
鍼灸は「治す刺激」ではなく「治す力を呼び起こす刺激」
鍼灸が行っていることは、とてもシンプルです。
皮膚や筋肉、筋膜にある感覚神経を通して、
「今、ここが緊張している」
「ここに負担がたまっている」
「ここが使えていない」
という情報を、体に伝えているだけ。
この刺激は、体性感覚神経を介して脳に届き、自律神経の中枢と同じルートで処理されます。
つまり鍼灸は、
自律神経に直接働きかけるというより、
自律神経が正しく働ける材料を渡している治療です。
「効きすぎない」のは、体の中で判断されているから
鍼灸の大きな特徴は、
・副作用が少ない
・人によって反応が違う
という点です。
これは、鍼灸の刺激が体の調整システム『外』から操作していないからです。
鍼灸の刺激は、神経・免疫・内分泌が連動するフィードバック回路の中で処理されます。
その結果、
・高すぎるものは下げる
・低すぎるものは上げる
という「必要な方向にだけ調整が起こる」反応が生まれます。
これを神経生理学では良性調節(benign regulation)と呼びます。
なぜ鍼の「ズーン」とした感覚が大切なのか
鍼灸施術を受けた時に感じる、
・ズーン
・重だるさ
・奥に響く感じ
これらは、
C線維(深部の感覚神経)という神経が刺激されたサインです。
このC線維からの入力は、浅いマッサージや軽い刺激とは異なり、脳幹の自律神経中枢に強く届きます。
そのため、
・内臓の働き
・自律神経症状
・慢性的な痛み
に対して、
体性―自律反射という形で影響が及びます。
これが、
「なんとなく気持ちいい」
以上の変化が起こる理由です。
鍼灸がしているのは「回復モードへの切り替え」
臨床で起きていることを、
あえてシンプルに言うなら、
体を『回復モード』に戻している
これに尽きます。
・眠りが深くなる
・胃腸が動き出す
・呼吸が楽になる
・気持ちが落ち着く
これらはすべて、
副交感神経(特に迷走神経)が
きちんと働き始めたサインです。
まとめ|鍼灸は「体の邪魔をしない治療」
鍼灸は、
・無理に作用しない
・外からコントロールしない
・体の判断を尊重するかも
治療です。
だからこそ、
・自律神経の不調
・原因がはっきりしない症状
・慢性的な疲れ
に対して、静かだけれど、確かな変化が起こります。
もし今、
「ちゃんと休めていない感じ」
「ずっと緊張が抜けない感じ」
があるなら、
それは体が整い直すきっかけを待っているサインかもしれません。
自律神経の不調でお悩みの方へ
当治療院では、
神経生理学の視点を大切にしながら、その方の状態に合わせた鍼灸治療を行っています。
「まだ病院に行くほどではないけれど…」
そんな段階でも、どうぞご相談ください。